ここでケインズの発した有名なレトリックに触れておく必要がありましょう。古典派や新古典派の経済学が、自然の状態に落ち着く、とか長期的には均衡状態になる、とか一種の調和論を唱えたのに対して、次のような痛烈な皮肉を言っている文章が面白い。
永い間には我々は皆死んでしまう。嵐の時に、暴風雨が通り過ぎて充分時間がたてば、海は再び穏やかになるだろう、としか言わないような経済学者は、あまりにも怠惰である。
正確ではないかもしれませんが、「ハテナ」はこの始めの言葉を、' In the long run, we are all dead' と今でも覚えております。この言葉が発せられた背景には20世紀はじめの不況への処方箋をケインズが示したことであり、したがって短期的な政策を急いでいたのです。このため逆にケインズには長期理論がない、という批判も出ましたが、その後ケインズのお弟子さん達(例えばハロッド)によって成長論を取り入れたケインズの動学理論に発展しました。