郵貯を始めとする民営化論議が大はやりですが、何故公的な経営はだめなのか、少し歴史的な推移をドラッカーに学んでみましょう。ドラッカーは、マネジメントについてこれまであまり知られていない事実があるとして、次の点を指摘しています。それはマネジメントの理論や原則をはじめて体系的に適用したのは、民間企業ではなくて公的機関であったというのです。
アメリカではじめてマネジメントを体系的かつ意識的に採り入れたのはアメリカ陸軍であったと指摘しています。そして1908年に始まるシティ・マネージャーの誕生です。シティ・マネージャーとは、選挙で選ばれ政治に責任をもつ市議会が政策を決定し、そのマネジメントは、政治的に中立の専門家、すなわち、シティ・マネジャーに委ねるというものなのです。そのころ企業では上級業務執行者であるマネジャーの肩書はまだ使われていませんでした。代わりにオーナーとヘルパーという言葉が使われていたのでした。それが伝えられたのは病院であり、マネジメントが企業で使われたのはゼネラル・エレトリック(GE)においてでした。
ドラッカーは言います。今日においてもマネジメントは企業以外の世界に多く見られると言います。さらに現代の組織体の中で最もマネジメントの意識が高いのは軍であろうとさえ言っているのです。ドラッカーは続けて次のように述べるのです。
40年前(*この著は1986年に訳書が出ましたので現在からは約60年前となります)、当時の新職業たるマネジメント・コンサルタントたちは、将来の客は、企業だけであると考えた。だが今日典型的なマネジメント・コンサルティング企業の客のうち、半分は企業以外である。つまり政府機関、学校や大学、病院、美術館、専門家団体、ボーイスカウトや赤十字などの地域団体である。そしてビジネス・アドミシストレーションの修士号保持者たち、つまりMBAは、美術館、市、連邦行政管理予算局などにおいて、ますます優先して採用されている。
日本ではどうして公的な機関のマネジメントがうまくできないのでしょうか。考えさせられる問題です。