次の警句は、かつて「ハテナ」が実務世界にいたときにメモしておいたものです。
上手な経営とは、企業機会に油断なく目を配り、即座にそれを認識し、間髪を入れずに追及する経営である。もちろんすべての革新が成功するとは限らない。しかし、革新に手をつけずにいて、気がついたら別の企業が大成功を収め、競走上の優位を獲得しているという場合に比べれば、失敗に終わったにせよ革新を試みる方が、ずっと危険が少ないのが普通である。
ある産業で支配力をもつ成功企業には、過去の名声に安住して現状に満足し、前と大きく異なった製品やマーケティング手法は混乱の原因であり、共食いすら引き起こしかねず、それゆえ採用に値しないものだと考えたくなる抜きがたい誘惑がある。支配的な企業にはまた、競争者と競争者のなしうることについて過小評価したいという誘惑がある。つまり「結局、彼らはわれわれの業績の足もとにも及ばない。彼らは要するに二流だ。恐れるに足らない」というわけである。しかし、このような受けとめ方は気分のよいものかもしれないが、誤りを招くのである。なぜなら、しいたげられた競争者は、大規模で自己満足に浸っている典型的な現状維持主義の業界リーダーに比べ、はるかに貪欲で、進んで危険を冒そうとし、変幻自在の行動をとる傾向があるからである。