1982年に連邦準備制度議長に就任したアラン・グリーンスパンは18年の長きに亙って金融政策の舵取りを行ってきました。5期も務めた例は米国史上前例がありません。ニューエコノミーとも称される現代のアメリカ経済金融情勢の激変するなかで彼の評価は高く買われていますが、同時に金融政策の舵取りがいかに難しいかをも示しています。わが国の日銀総裁の舵取りの失敗は、古くは昭和44年に就任した佐々木直氏の金融緩和策や、「平成の鬼平」と言われた三重野康総裁のバブル退治のための金融引締めとその結果長引く不況の始まりを導いた責任者とも言われています。
このように中央銀行として重大な責務を担う金融政策の舵取りは、果たしてどれが正しいのかどうか、どの局面で適切な対応をすべきかどうか、は非常に難しく一概に決められず矛盾した理論や政策がしばしば見受けられるのであります。そこで金融政策について以前から皮肉に満ちた多くの警句や
箴言
が見られます。これらの一部を紹介しましょう。
・金融政策は紐であって引っ張ること(金融引締め)はできるが、押すこと(景気刺激)はできない
・金融政策は俊敏であるべきにもかかわらず、いつも小出しで遅すぎる: too little, too late
・金融システムを危険に曝すから大きな銀行は潰せない: too big to fail
・セーフティ・ネットがあるがために銀行の大胆な行動を起こし金融システムを危険に陥れる: モラル・ハザード
・経済学者は一方では(on one hand)、他方では(on the other hand)といって言を左右にして煮え切らない: 片腕の経済学者(one-armed economist)はいないものか
かなり皮肉の効いた箴言ですが、要はいずれも金融政策の信憑性や説明責任、透明性などに納得できない人たちの不満のあらわれなのでしょうね。