では判例・慣習などから構成されるいわゆるイギリスの憲法にはどのような原則が盛り込まれているのでしょうか。以下二つの原則があると言われております。
@ 王権と王制の存在
これは曰く言い難しの感がしますが、王の機能というものはあたかも汲めども尽きぬ泉の如く機能していると申し上げるより仕方がありません。確かに臨機応変に王の機能が移管・委譲されてきましたものの、そうかといって王の機能のすべてが委譲され尽くしてしまったのではありません。その機能の発揮と抑制の調和は、まさにイギリス国民の英知によって支えられているといってよいでしょう。
A 国会の優越性
イギリス国会は王権を制約できる制定法を作ることができます。故に主権(sovereignty)はイギリス国会にありといえます。しかしこの権利はあくまでイギリス国内法での主権で国際法からは批判されますので、sovereignty の代わりに supremacy という言葉が使われます。国会の優越性といわれる所以はここにあります。
またイギリスには三権分立というのは成立しません。正確には、国会が優位に立つ立憲王制であります。しばしば誤解されるのは、イギリスは議院内閣制であると思われている向きもありますが、この用語はイギリスにはないのです。日本の統治構造は議員内閣制であり、「その範をイギリスにとっている」というのは誤解であります。
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