前夜までバジョットについてかなり紹介してきましたが、このバジョットの前にもう一人の金融学者にして銀行家がいました。H.ソーントンという人です。一説ではバジョットの先駆者と言われていますが、「ハテナ」は必ずしもそうは思っていません。何故なら、バジョットは準備金を大切にしたのに対してソーントンには準備金の概念は希薄、否殆ど触れていません。しかし1802年に刊行された『紙券信用論』は、当時の金融貨幣論のなかできわめて斬新な見解が見られ、この著も優れた古典のうちに入っています。そのなかにこんな面白い逆説が述べられています。
〔人がたくさん貸し込み過ぎたので、自分の支払いが出来なくなったとは言えようが〕お金に詰まったのでたくさん貸さざるを得なくなったと答えようものなら、恐らく奇妙にきこえよう。
It would seem strange to reply......that man in question had found it necessary to lend largely, because his cash failed him.
ホント〜??? そのココロは長くなるので次夜で明らかにしましょう。
(参照: Thornton, Henry, An Enquiry into the Nature and Effect of the Paper Credit of Great Britain)