ハイルブローナは、投資家の行動について驚くほど厳しい姿勢を見せています。かれの言うことを少しばかり引用してみましょう。
・たしかに正統派金融の格率(maxims)の中で、流動性の崇拝、すなわち「流動的な」有価証券の所有に資産を集中することが投資機関の積極的な美徳であるとみなす教義ほど反社会的なものはない。
・今日の最も熟練した投資の現実的な、個人的目的は、アメリカ人がうまく表現したように「仲間を出し抜き」、群衆の裏をかき、質の悪い、価値の下がった半クラウン貨を他人につかませることである。
・長期間にわたる投資の予想収益を予測するよりむしろ、2, 3 ヵ月先の慣行的評価の基礎を予測しようとするこの虚々実々の戦いは、玄人筋の胃袋を満たすために大衆のなかに鴨のいることすら必要としないーその戦いは玄人同士で演ずることができるからである。また、評価の慣行的な基礎は真の長期的妥当性をもつという単純な信念を抱いていることをも必要ではない。
・なぜなら、それは言ってみれば、スナップ*とか、オールド・メイド(ばば抜き)とか、ミュージカル・チェア(椅子取りゲーム)に似た遊戯だからである。
・これらの遊戯では、遅くもなく早くもなくちょうどよい時に「スナップ」と叫んだものとか、遊戯の終らない前にばばを隣の人に手渡したものとか、音楽の止まったときに自分の椅子を確保したものが勝ちとなる。
・遊戯しているものはみな、手から手へ回されているものが「ばば」であることを知っており、また音楽の止まったときに遊戯者の中のだれかは座る椅子がないことを知っているにもかかわらず、これらの遊戯は面白おかしく遊ぶことができる。
*研究社リーダーズ辞典によりますと、次のような説明があります。”スナップ<トランプ遊びの一種、カードを1枚ずつ出していき、同じランクのカードが出たとき最初に、snap と言った者が他のカードも得る>”
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