同じ14世紀で今度は北西ヨーロッパの事例を挙げてみましょう。その町ブリュージュは、前夜でのイギリスのコールチェスターとは異なって両替商たちの間の相互の帳簿振替という信用制度が行われていました。今風に言いますと金融業の専門化というものです。ここでの商人は、現金取引よりも、両替商に預金口座を設けた上で、帳簿振替による決済が上回っていたとされます。商業手形の裏書きが始まるのが17世紀からですが、その直前まで振替業務は残っていました。この両替業務より継続されたのがアムステルダムなどの銀行機構 public bank でありました。銀行は、銀行券の流通よりも、こうした預金振替に基づいて発展したといえましょう。