これは有名な『共産党宣言』(1848年)のなかでの「万国の労働者よ団結せよ!」をもじったものです。これを本歌取りしたのはなんと脳科学者・解剖学者の養老孟司さんです。養老さんは、そのエッセイのなかで「日本の将来」と題し、歯切れのいい調子で次のように書いています。
「日本の将来なんか、俺には関係ない。そういうことは、若い人が考えればいい。若い人なら、将来とは自分に関わることだから、きっと熱心に考えるだろう。そう思っているのに、私より若い人が日本の将来を訊いてくる。ものの順序が、はじめからおかしい。・・・」
まるで、漱石の『坊ちゃん』のような啖呵で皮肉って、さらに筆を進めます。
「国民がすべて、経済的中流になってしまえば、プロレタリアとはすなわち、時間という財産を欠く老人たちである。革命の担い手がプロレタリアとすれば、将来の革命は老人が起こすことになる。万国の老人よ団結せよ。諸君はもはや些少の年金のほかに失うべきなにものをも持たない。・・・」
ナールホド?年金生活を送る多くの老人は、プロレタリアなんですね。でも革命を起すほどの老人力はなし、養老先生だけがひとり気張ってもそれは無理なんではないでしょうか。
(参照: 養老孟司『続・涼しい脳味噌』 文春文庫 p.78-79)
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