このロンドン万国博覧会から27年後、外交官の眼で歴史を鋭く洞察したモーリアという人も次のように指摘しました。
イギリスの力は今や、衰微と退潮の流れに入っている。見かけは巨大な鉄甲戦艦であっても、エンジンの火はもはや消えかけており、船は舵を失い漂流し始めている
と。それからまた10年後のロンドンエコノミストの編集長(モーリアー)も同じような筆法で語ります。
良し悪しは別にして、今、イギリス人の心に大きな変化が起こっている。われわれは今、自分自身に確信がもてなくなり、かつての古い考えや意見を堂々と述べるのをためらい、自分の内面が命じるところのものに自らまた疑いをさしはさむ。われわれは自分たちが誰かを統治する道徳的な正当さをもはや信じられなくなりつつあり、それには自らへの統治ということも含まれているのである。
このようにして大英帝国の衰亡の歴史が始まるのです。だが、「ハテナ博士」は今でもこう信じています、確かに世界に版図を広げた植民地の喪失、2度にわたる世界大戦による疲弊等々パクスブリタニカの勢いは失われましたがイギリス人の精神は決して衰亡していないと。
これを論じていきますと延々とイギリス論が続きますので、いずれ機会がありましたら第何夜かで取り上げることとして話題を変えることといたしましょう。
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