高杉良の企業小説『乱気流』のなかで、こんな会話が綴られています。「・・・経産は弱きを挫き強きを助けるのか・・・」。経産とは作者が付けた巨大新聞社のことです。ある企業を記事にした箇所のすぐ下の広告欄に、その企業のコマーシャルを載せるのは、いかにもその企業に肩入れしているかのように受け取られても仕方がない、という趣旨のことでした。つまり記事と広告とのタイアップは読者に誤解を与えるということでしょう。新聞は社会の木鐸である、とかペンは剣より強し、とかよく言われますが、これでは真実を報道することにはならないと、作者はフィクションで訴えているように思えるのです。
(高杉良:『乱気流』上下 講談社より。上記のお話しは上巻のp.311〜p.314.に出ています。)