ユートピアとは理想郷とか桃源郷とか言われ、決して実現しない理想のくにを指す言葉と「ハテナ博士」は考えております。何故なら、そのような理想郷がもし実現してもその途端にそれはユートピアではなく現実の世界となるからです。そうですからユートピアはその言葉の持つ意味において永遠の理想なのです。現実に存在しないそんなユートピアなど何の意味があるか、とおっしゃる方もいるでしょう。いえいえそうではありません。クマーという人はその著書*で次のような名文をものにしています。
ユートピアニズムについての最も品格のある言明の一つと言えるもののなかで、オスカー・ワイルドは次のように書いている。
”ユートピアを含まない世界地図は一瞥にすら値しない。なぜならそこには人間性がつねに立ち寄る国が欠けてているからである。人間性がそこに立ち寄るとき、それは外に目を向けより良き国を目にして、出帆する。進歩とはユートピアの実現なのである。”
”われわれが幻想と呼ぶものはしばしば実際には、過去や現在の現実のより拡大されたヴィジョンー世界の諸力を広く一掃した人間の魂の意志的な運動ーであり、一つの生活の転換よりはむしろ大胆な目標へと向かう運動である。”
そしてクマーは著書の末尾で、「ユートピアを含まない世界地図は、一瞥にすら値しない」と締めくくります。
(クリシャン・クマー、菊池理夫・有賀誠訳『ユートピアニズム』より)
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