ウォータマンという人は末尾に掲げる本のなかで、こんな興味あることを書いています。少し長くなりますが、要点を引用してみましょう。
会社の長期的な改善は、ただ単に管理者が注目するだけでは達成できない。社員の能力を管理者が本心から信じ、それが相手に伝わって初めて達成できるのだ。信用できる期待は好結果を生む。だが嘘の期待、あるいはどうせできっこないという態度は、逆の結果を引き起こす。これを”ピグマリオン効果”と呼ぶ。
ここで、ピグマリオン効果の謂れをちょっと拝借。
ピグマリオンというのは、もともとは神話に出てくるキプロスの王様の名前。彼は彫刻を趣味としていたが、ある時自分で彫った象牙の女性像に恋をしてしまった。その像こそ、彼の理想の女性の姿そのものだった。彼はその像に生命を与えるよう、神に祈り続けた。そしてついにその祈りがビーナスの心を動かし、像は生きた女性の姿となって彼の前に現れた、とさ。
この話をもとに、バーナード・ショーは『ピグマリオン』という脚本を書きました。ヘンリー・ヒギンスという人が花売り娘イライザ・ドゥリトルにキングス・イングリッシュを教え、淑女に仕立て上げるという有名なストーリーです。
ピグマリオンの神話は、その底に次のテーマを含んでいるのです。それは、人の行為というのは相手の期待度を反映するというテーマです。教育においても仕事においても、何をどう期待するかによって結果に大きな違いが生まれるのです。言い換えれば、”人は自分に何を期待するかということと同時に、まわりから何を期待されているかによっても影響されがちだ”(ロバート・マートン)というわけです。わたしたちが抱くイメージを相手が信じてくれたとき、そのイメージは「自己達成」するというのです。
ちょっとややこしくなりましたが、ピグマリオンという言葉に出くわすことがあります。そのときそのさわりを思い出していただければ、ハテナ博士の”ピグマリン効果”は甚だ大きいと自己満足しています。
(R.H.ウォータマン『超優良企業は、革新する』より)
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