「市場の失敗」と対になって考えさせられるのが、「政府の失敗」です。政府の失敗には二つの要因があります。
@政府の諸機関には私企業にくらべどうしてもコスト削減の動機が希薄となります。 A政府の活動に対する需要が増大していわば需要のインフレ化が起こります。これに対して民間の市場の利点は、一般には費用削減の努力を企業は常に行っています。”一般には”と言いましたのは、民間企業でも寡占や独占が進みますとその努力が失われがちとなり、市場の失敗を招く場合があるからです。
では、なぜこれらの二つの要因が発生するのでしょうか。次の3つにまとめられましょう。
@政府には倒産の心配がない!だからいわゆる官僚制の弊害を克服することが困難なのです。 A私企業のように収益とコストを価格メカニズムのもとに評価できない、あるいはしようとしない。なぜなら政府は議会で承認された予算がコストを規定するからです。言い換えればコスト削減ではなく予算の極大化が至上命題だからです。 B公共的な性格から、成果の測定が困難です。客観的な評価の基準が存在しません。それはよく耳にする次のような幻想からきています。”インプットを増大させればさせるほどよりよいアウトプットが算出されるはずだ”という幻想なのです。
前夜のお話と並んで、「市場の失敗」、「政府の失敗」の双方が共に存在し、その発現によって市場、政府の機能が著しく損なわれることに注目すれば、すべては市場が応えてくれるとか、政府が面倒を見てくれるとか、安易に信頼を寄せるのは危険ですね。だからこそ、市場万能主義、政府規制のあり方(民営化論もその一つ)とかが、現代経済政策のたいへん重要な課題となっているのです。
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