時宗は、浄土宗の西山派の聖達上人を師とした一遍上人が浄土宗から分かれて開いた宗派で、大本山は藤沢の遊行寺である。この寺の創建は、弘安初期(1279〜80)に一向俊聖上人が開山した。弘安5年(1282)に一遍上人が鎌倉での時宗布教念仏のため巨福坂から鎌倉に入ろうとしたが、執権北条時宗の警護の武士に阻止され鎌倉幕府内に入れず、当地で一夜を踊り念仏で明かしたといわれ、この寺域は一遍上人法難霊場といわれている。

石段を上がると四脚門の山門がある。キリシタン大名の九州中川藩江戸屋敷の菩提寺であった東渓院が明治時代の廃仏毀釈によって廃止され、この寺に移築された門で、欄間に中川藩家紋の「くるす紋」(キリスト教の十字の紋)が掲げられてある。
山門脇には、江戸時代から信仰されている子育て地蔵、その向かいに咳の神様「おしゃぶき」という石の祠がある。毎月お参りすると咳が止まるご利益があるといわれている。境内にあるシャクナゲ、萩、レンギョウなどの花が参拝者を楽しませてくれる。
本堂は安政6年(1859)の建築で、本尊として室町時代作の阿弥陀如来立像、両脇侍として観音菩薩・勢至菩薩(市指定文化財)が祀られてある。
寺宝として、東渓院の本尊であった木造釈迦如来像と木造薬師如来像、木造地蔵菩薩立像、一向上人立像、正中2年(1325)の銘がある安山岩製の板碑(市指定文化財)、かくれキリシタンの燭台二基などが保存されている。
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