1970年代になって個人の借り入れ感覚がもっとも変化したといえるのではないでしょうか。銀行の方でもとりわけヨーロッパの銀行は、これまでは貸出しをあからさまに奨励するのを差し控えてきました。ところがアメリカの銀行は対照的に対個人への貸出しを積極的に進めてきました。ショーウィンドーにローンの広告を出すようなことは今までになかったことでした。この傾向はヨーロッパの銀行にも波及し、サンプソンに言わせれば、「石鹸を売るのと同じようにおおっぴらにローンを販売するようになった」のです。こうして借入金に対する道徳的・社会的な抵抗感は、鳴りをひそめてしまいました。こうした借入金に対する1930年代の慎重さは、1980年代には臆病とされるに至ってしまったのです。彼はまた次のようにも言っています。
今日ではグローバルなコンピュータ・ネットワークによって、クレジット・カードは何百万人もの顧客と世界中の商店やホテルやサービス機関を結んでいる。これはまさに金が魔法の杖に乗って移動しているさまをすべてそのまま映し出しているといってもよい。「(もともとは査証を意味する)ヴィザ」とか「(接近可能を意味する)アクセス」などの人を誘惑するような名前からは、眉をひそめて「貸付はおことわりします」という、あの昔の銀行マネジャーの顔などとうてい浮かんでこない。・・・・・・