前夜からの続き

第421夜から第425夜まで

第421夜 - 紙っぴらの紙幣

以下はチャールズ・ディケンズの文章です。

その不思議な紙製の通貨がロンドン市内に流通しているときは、風があちこち、あらゆるところで旋回しているようなものだった。いつやってくるのか。どこへ飛び去るのか。どの藪にもひっかるし、どの樹にでもひらひらと落ちたり、飛んでいっては電線にひっかかったりする。

この文を読んでいてふと紙幣の価値とは何だろうと思ったりします。いやそれ以上に一体ホリエモンがやった大量の株式分割のやり方も”紙製の通貨”を”株券”に替えるだけで何となく似ているように思われるのは「ハテナ」の勘ぐりでしょうか。

(参考: サンプソン 同上書)

第422夜 - 私利の悪徳、公共の利益

イギリスの風刺作家バーナード・マンデヴィルは『蜂の寓話』(The Fable of the Bees)で有名です。何が有名かといいますと、利己心の追求は公益につながるという逆説を掲げたことにあり、風刺詩の形をとったその著作は副題を、Private Vices, Public Benefits としています。マンデヴィルは1670〜1733年の人で、この思想は後にアダム・スミスの、あの利己心の追求や自由放任の考えに影響を与えたといわれています。もっとも「ハテナ」にはマンデヴィルとスミスの私益は本質的に異なると考える者でありますが、スミスに影響を与えたということは本当でしょう。
さて、マンディヴィルはいったいどういう風刺詩を書いたのでしょう。これから数夜にわたってそのエッセンスを抜き出して紹介していきましょう。その研究の第一人者である上田辰之助氏の『蜂の寓話』からの引用です。昭和25年の刊行で詩の文体はかなり古いのですが、そこは少々我慢することにしましょう。

第423夜 - 『蜂の寓話』 私人の悪徳 公共の利益

本書の副題は、
ブンブン不平を鳴らす 蜂の巣 
悪漢ども化して正直者となる話
です。 その1

 このように部分はすべて悪徳に満ち、
 しかも全部が揃えば一つの天国、
 平時は媚びられ、戦争では恐れらる。
 かれらは外国人畏敬の的、
 そして金と命に糸目つけぬから
 「蜂の巣」界の重鎮だ。
 その国の功徳無量、己が罪まで手伝って
 かれらを偉大にするという有難さ。
 そして徳操は政治から
 幾千もの手練手管を教えられ、
 薫陶その宜しきを得て
 悪徳と親交を結ぶ。それからは
 全体のうち最悪のものでさえ
 公益のため何かお役に立つようになった。

(参照:上田辰之助『蜂の寓話ー自由主義経済の根底にあるものー』 旧漢字は新漢字に改めました)

第424夜 - 蜂の寓話 その2

 その2

 治国の道とは一体こうしたもの、
 部分は不平不満をならべても
 全体は立派に治まって行く。
 丁度音楽にも全曲の調和あり、
 雑音を基調に合わすよう、それでまた
 正反対の敵味方、ヤケにお互助け合う。
 節欲と禁酒とつれ立って、
 飲み食いの道楽に御奉公。

第425夜 - 蜂の寓話 その3

その3

 悪の根という貪欲こそは
 かの呪われた邪曲有害の道徳。
 それが貴い罪悪「乱費」に仕え、
 奢侈は百万の貧者に仕事を与え、
 忌まわしき鼻持ならぬ傲慢が
 もう百万人を雇うとき
 美貌さえも、そして虚栄心もまた、
 みな産業の奉仕者である。
 かれらご寵愛の 人間愚 オロカサ 、それは移り気、
 食物、家具、着物の移り気、
 本当に不思議な馬鹿気た悪徳だ。
 それでも商売動かす肝腎の車輪となる。

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