築地のランチタイムはJJK会館3階の談話室Kで深々とソファーに腰掛け、ジュースとピラフもいい。外へ出て会館周辺のランチタイムを覗いてみる。周辺は一日当たり水産物2400トン、青果物1400トンを商いする世界一の築地市場のお膝元、かつての料亭街の流れもあって和食系の店が多い。
 本日のメニューは会館を出て右か左かで運命が決まる。左は近松の名作「心中天の綱島」に由来する四代目女将の河庄双園を‘一度は’と横目にして@「江戸銀」のチラシ丼は堅実、A「福新楼」は3人寄れば文殊の知恵で3品を取り分ける家族的中国料理B「CALI&CARI」はエスニックなカレーと焼きたてのナム、C「演舞場別館」は地の利を得て昼前に入るとケーキが付いたが今は店が変わりD「瀬川」のマグロ丼は場外市場のカウンターで先着売り切り、E「はいばら」の鰻丼で元気、F「若竹」は生簀を前に、きちんと和服姿の配膳が嬉しい。築地で魚が食べたい時は場外の雰囲気でQ「鈴木水産」がズバリ応えてくれる。
 右へ行くと魚系はG「浜伸」、H「DASSE」は歌舞伎座裏へ足を延ばして浪花のクワ焼き、昭和通りに面した明るいJ伍郎蔵カレー」、シアトルで創業したLスターバックスコーヒー、レトロな地下鉄入り口のM喫茶店「パウリスタ」、麺の評判がよいN「二八そば」、JJKが半蔵門にあった頃に通った姉妹店O「十割そば」、吉祥寺店でメンチカツに行列をなすP「さとう」のサイコロステーキ・・・と果てしなく続くのである。
 場内市場の8号館に、車に気をつけ踏み込むと、先ずI「洋食たけだ」の貴重な鮪の尾肉ステーキは築地ならではである。
 飛躍するが「世界の飢餓による死亡数は一日25000人」(日本国際飢餓対策機構の資料より)と言う。敗戦後、飢餓時代を駆け抜けた日本にとって、この人類共通の課題も、あまりにも恵まれ過ぎた日本の食糧事情のなか、つい埋没されがちな現実である。(竹内 晃)

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